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耐震診断・耐震改修事例

大津市 龍谷大学・町家キャンパス龍龍

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耐震診断・耐震改修までの流れ

申し込み平成20年1月16日(水曜日)

申し込み内容:木造住宅の耐震診断・耐震改修

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事前調査平成20年2月12日(火曜日)

■改修前の状態

改修前

■耐震診断概要
築年数 112年
構造 木造2階建て(母屋)、木造平屋建て(離れ屋)
建物仕様 非常に重い建物(土葺瓦屋根+土塗壁)
接合部 IVほぞ差し、釘打ち、かすがい等
基礎形式 その他の基礎
延床面積 150m2
耐震強度 母屋0.36 / 離れ屋0.46
(地域係数Z:1.0 / 軟弱地盤割増:1.0)
場所 大津市京町一丁目1番46号
用途 キャンパス
利用者構成 不特定多数

※財団法人日本建築防災協会ソフトによる耐震診断結果

■図面

図面

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耐震補強計画 平成20年3月21日(金曜日)

築112年の町家の改修のため、真壁造りの現状イメージを損なわないように、また接合部はほぞを使用したピン構造のため、筋違い等を設けて剛構造にならないように、荒壁パネルの胴縁仕様にての補強を計画する。なお、申込者とのヒヤリングのなかで、限界耐力による補強のお話もありましたが、予算および工期の事情により、現改修内容を採用する。また今回は補強計画耐力数値を申込者の都合にて補助制度適用の1.0とせず0.7程度にて計画する。

母屋 荒壁パネル両面貼14箇所、荒壁パネル片面貼5箇所、
通し貫2箇所、床、大引、根太、束等撤去新設。
離れ屋 荒壁パネル両面貼 2箇所 但し、建物のころびが大きいため
床、壁全てとりこわし建て起こし後改修する。

耐震概算見積もり
母屋:250~260万円(参考) / 離れ屋:180~190万円(参考)

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業務担当者の選定・面談 平成20年6月13日(金曜日)

  • 龍谷大学総務担当者3名により設計申込者3事務所(登録会員)より選定
    (設計担当選定者:白井建築事務所)
  • 申込者と業務担当者との面談 (当協会会議室にて)
    申込者の要望事項、調査委員が作成した資料の説明、当委員会の規約等を十二分に説明。
  • 設計内容が複雑につき担当設計事務所に調査委員が現地説明会を行う。
    (平成20年7月2日 水曜日)

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業務担当者の決定 平成20年7月28日(月曜日)

龍谷大学総務担当者3名と担当設計事務所の協議にて
施工申込4業者(内1業者は申込者推薦)より1業者選定。(見積合わせ方式にて)
(施工選定者:株式会社北井工務店)

改修内容

改修中

改修中

改修後

改修後

■耐震作業内容
工事期間 平成20年8月1日~平成20年9月10日
工事内容 母屋:診断時補強計画と同じ / 離れ屋:診断時補強計画と同じ
改修箇所 母屋:診断時補強計画と同じ / 離れ屋:診断時補強計画と同じ
耐震強度 改修後の数値:母屋 0.70 / 離れ屋0.87

お客様の声

龍谷大学・町家キャンパス「龍龍」の改修工事
龍谷大学社会学部教授 脇田健一

龍谷大学社会学部では、2007年度より、「大津エンパワねっと」という教育プログラムに取り組んでいます。この教育プログラムの意図は、「学生の伸びようとする力」と「地元地域の自ら活性化しようとする力」が出会い、融合することで、相互に高めあっていくことにあり、大津の中心市街地と、社会学部のキャンパスのある瀬田の2ヶ所で地域づくりの活動を展開しています。しかし、キャンパスから離れた中心市街地については、活動拠点が存在しなかったことから、大津市役所(都市再生課)にご仲介をいただき、114年前に建てられた(推定)伝統的な町家を借り上げ、2007年12月16日に、町家キャンパス「龍龍」(ろんろん)を開設することになりました。

この町家キャンパス「龍龍」は、おもに、龍谷大学の学生と地域の皆さんとが協働で実施する地域づくり活動(「地域エンパワねっと実習」)の打ち合わせや、イベント会場として利用されています。また、大津市役所都市再生課によって実施された「親子町家体験事業」の会場のひとつとして利用されるなど、他団体の中心市街地の地域づくりの活動にも協力する形のなかで活用されています。

ところが、このように中心市街地における地域づくりの交流の場として活用されている「龍龍」には、当初から懸念される問題がありました。耐震問題です。築年数100年を超える古い建物を、多くの人々が交流する社会的な施設として利用するにあたっては、この耐震問題を避けて通ることはできません。そこで、龍谷大学社会学部では、(社)滋賀県建築士事務所協会アーキ・サポート委員会に調査をお願いしました。その結果、強度不足が判明し、耐震補強を行う必要が出てきました。

幸いなことに、耐震補強も含めた改修工事については、町家のオーナーさんのご理解とご支援もあり、2008年の大学夏期休暇中に実施できることになりました。耐震工事については、アーキ・サポート委員会から、荒壁パネルを採用しての補強計画案の作成・助言・提案をいただきました。土とパルプを固めて作った荒壁パネルによる耐震工事は、従来よくある金具や筋かいなどで強度を確保するものとは異なっていました。

改修工事の設計にあたられた、白井建築事務所の白井勝好さんからのご説明によれば、地震の揺れに逆らうのではなく、柔らかく受け止めることによって建物の倒壊を防ぐ新しい工法とのことでした。説明を受けた時、目から鱗が落ちるような思いでした。また、この耐震工事とあわせて、潰れかかって使用禁止になっていた離れの大幅な改修や、町家の特徴ともいえる虫籠窓(むしこまど)を美しく作り直していただくなど、白井さんや施工を請け負っていただいた工務店さんには、大変お世話になりました。

現在、大津の中心市街地では、地域に多数残る伝統的な町家を地域資源としていかに残し活用していくのかが大きな社会的課題となっています。しかし、老朽化した町家を補修し維持していくためには、所有者の努力や負担が必要になります。また、耐震についても大きな不安があります。「町家をできれば残したいが、なかなかそれも難しい」とお考えの皆さんには、このような荒壁パネルを使った耐震工事が、大きな支えとなるのではないでしょうか。

また、建築技術の側面から、町家の所有者の皆さんを社会的に支えていくことは、結果として、伝統的な町並みを地域の財産として引き継いでいくことにもつながっていくように思うのです。そのような意味で、荒壁パネルによる耐震工事は、社会的にも大きな意味を持っているように思われます。